概要
不確かな期待を可視化し、相性でつながるランニング体験
多くのランナーは、 自分に合う仲間やグループを見つけるのに苦労しています。 RunBuddyは、目的、ペース・スケジュール・走り方が合う人同士をつなぐコミュニティ型アプリです。 相性とつながりを重視することで、仲間とのランニングを通じて継続的で支え合える習慣づくりをサポートします。
インタビュー質問の設計、リサーチ結果の統合、使いやすさや運営面でのデザイン判断、 そしてAppleのHuman Interface Guidelinesに沿った主要プロトタイプの構築を担当しました。
私の役割
UXリサーチ
UXデザイン
UIデザイン
習得スキル
セカンダリリサーチ
インタビュー
データ統合
デザインの反復改善
プロジェクト概要
8週間
2025年春
アカデミックプロジェクト
チームメンバー
Daniella Untivero
John Gallarate
John Lin
Marissa Manzanarez

課題
不明確な期待がランナーをグループ参加から遠ざける
自分のペースや雰囲気、目標に合うかどうかがわからないと、ランナーは参加をためらってしまいます。 「内輪感のあるグループだった」「比較される気がした」「足を引っ張るのが怖い」などの経験から、 最初の一歩を踏み出せないケースが多く見られました。 こうした不安は、事前情報の不足から生じることが多く、最終的にグループ参加を避ける結果につながっています。
解決策
相性を見極められる手がかりを提供する
調査の結果、明確な期待値の設定が重要であると分かりました。 それはペースだけでなく、グループの雰囲気、社会的な関係性、心理的な安心感まで含みます。 多くの参加者は知人を通じて参加する方が安心だと答え、大規模なグループの方が多様性があると感じていました。 つまり価値観の共有、柔軟性、雰囲気といった「相性の手がかり」が、参加のハードルを下げる鍵であると分かりました。
機能 1
オンボーディング質問
新規ユーザーは、ペースや好み、目標について簡単な質問に答え、相性の良いグループとマッチングできます。
機能 2
グループ探索
ユーザーは「初心者歓迎」「ソーシャル」「目標重視」などのタグをもとに、 自分のスタイルに合ったローカルグループを探せます。
機能 3
レビュー投稿
ユーザーはランニング後に絵文字やタグ、任意のコメントで簡単にフィードバックを残せます。 これにより他の人がグループとの相性を判断しやすくなります。
文献レビュー
明確さとつながりが違いを生む
ランニンググループに参加する際の課題を理解するために文献レビューを行いました。 その結果、明確な仕組みと 歓迎的な雰囲気が、人々を参加・継続に導く一方で、 不確実さは新しいランナーにとってランニング参加への障壁となっていることが分かりました。 また、社会的なつながりを築くことが、習慣を継続する上で重要であることも示されました。 これらの洞察から、ランナーには「相性の良いグループを見つけ、意味のあるつながりを築くための仕組み」が必要だと仮説を立てました。
「社会的なつながりを築くことで人々はランニングを続けやすくなる。 ランナーが友情を育み、支え合えると、モチベーションを維持し習慣として定着しやすい。」
「明確な仕組みと歓迎的なグループは、人々の参加と継続を促す。 定期的なランニング、明確な期待値、心理的な安心感が、ランナーに快適さと継続意欲を与える。」
「不確実さが大きすぎると新しいランナーは参加をためらう。 何を期待していいのか分からなかったり、自分が合うかどうか不安に思うと、人は参加しなくなる。」
競合分析
分析を通じたプロダクトの方向性
文献レビューと課題の定義を踏まえ、競合分析を実施し、 機会領域を特定してプロダクトの方向性を導きました。 分析の結果、私たちのプロダクトは 相性の合う仲間やグループと有意義なつながりを重視するランナー に最も適していることが分かりました。
機能 |
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---|---|---|---|
相性マッチング | ❌ | ❌ | ❌ |
相性の良いグループ探し | ❌ | ❌ | ✅ |
グループの明確な情報 | ❌ | ❌ | ✅ |
社会的なつながり | ❌ | ✅ | ✅ |
グループラン対応 | ✅ | ✅ | ✅ |
初心者向け | ✅ | ❌ | ✅ |
パフォーマンストラッキング | ✅ | ✅ | ❌ |
イベント調整 | ✅ | ✅ | ✅ |
スケジュール柔軟性 | ✅ | ✅ | ✅ |
ローカル発見 | ✅ | ✅ | ✅ |
ユーザーインタビュー
グループラン参加の障壁を理解するために10人のランナーへインタビュー
セカンダリリサーチの後、初心者から中級者までのランナーがどのようにして グループランを見つけ、参加しているのかを探るために半構造化インタビューを行いました。 特に社会的な関係性、モチベーション、 心理的な安心感、そして不確実さに注目しました。 目標は、ランナーがグループ環境で「支えられている」「自信を持てる」「つながりを感じられる」と思える要素を明らかにすることでした。
参加者属性
- 参加者数: 10名
- 年齢層: 23〜38歳
- カジュアル〜中級ランナー
- ペーサー経験者を含む
- ソロ派とグループ派の混在
- アプリ・ウェアラブルの利用状況はさまざま
調査方法
- 半構造化インタビュー
- ランナーがグループを見つけて参加する方法に着目
- 参加・継続の要因を探る
- 質的・探索的アプローチ
調査の焦点
- ランニング習慣
- グループとの相性
- テクノロジーの利用状況
- 心理的な安心感
- 意思決定における不確実さ
- 理想的な体験・機能アイデア
Descriptiveコーディング
Descriptiveコーディングを用いて、グループの相性・動機・心理的安心感に関するテーマを抽出
インタビュー後、Descriptiveコーディングを用いてデータから直接テーマを導き出しました。 これにより参加者の声をより正確に反映し、根拠のある洞察を得るとともに、潜在的なバイアスを軽減しました。

アフィニティマッピング
ランニングの社会的側面を理解する
インタビューから得られた重要な観察結果にDescriptiveコーディングを適用し、
それらのラベルをクラスタリングしてテーマを抽出しました。
その結果、以下のような洞察が浮かび上がりました:
– 社会的な相性や雰囲気が主な動機付け要因
– 心理的安心感と情緒的な安全性
–
グループに関する不確実さの軽減 /
不確実さが障壁となる
これらのテーマは、グループランに参加する動機や障害をより深く理解する手助けとなりました。

ペインポイント
最も重要なフェーズを特定する
抽出したテーマを、グループラン体験の3つのフェーズ(ランニング前・ランニング中・ランニング後)のペインポイントにマッピングしました。 その結果、MVPではランニング前フェーズに注力することを決定しました。 この段階は、不確実さや社会的不安を軽減する大きな機会を持っており、 これらは参加を妨げる主な障壁であり、ランニング中・後の体験にも影響を及ぼすことが分かりました。
ランニング前 MVP対象
- 期待が不明確
- グループとの相性への不安
- 社会的不安や心配
ランニング中
- ランニングペースの不一致
- 自信喪失
- 場違いに感じる
ランニング後
- 社会的交流の欠如
- ランニング後のぎこちなさ
ユーザースペクトラム
ユーザーの多様性をマッピングする
ペインポイントを特定した後、ユーザーの態度・行動・嗜好の違いを探るために ユーザースペクトラムを作成しました。 これにより、社会的な相性、ロジスティック面での自信、ランニング経験、年齢といった ユーザーの違いを可視化できました。 その結果、より包括的で代表性のあるペルソナを構築でき、 単純化しすぎないリアルな多様性を反映することが可能になりました。

ペルソナ
ランナーを理解する
ユーザーのニーズをより深く理解するために、ClaireとKellyといったペルソナを作成しました。 Claireは初心者ランナーで、自分のペースや馴染めるかどうか、評価されることを心配しています。 彼女は明確な期待値とフレンドリーな雰囲気を持つグループを求めています。 Kellyは中級ランナーで、自分のペースや社交的なスタイルに合う、 支援的でプレッシャーの少ないグループを重視しています。 どちらのケースも、参加に自信を持たせるための 相性の手がかりや社会的な安心感が重要であることを示しています。
How Might We
デザイン・シャレット
考え得る解決策の検討
「How Might We」の問いをもとに幅広いアイデアを出し、 デザイン目標との適合度に基づいて優先順位をつけました。 感情ベースの検索、過去参加者のレビュー、初参加者バッジ、MBTI風のマッチングなど さまざまな選択肢を検討しましたが、 最終的にはオンボーディング質問票を MVPとして選びました。 この質問票では、ペース・個人目標・グループの雰囲気など 社会的な相性に関する質問に答えてもらい、 より良いマッチングを支援します。 また、過去のレビューも補助的機能として組み込みました。 この方向性を選んだ理由は、 早期に意味のあるユーザーデータを収集できることと、 不確実さを軽減できることにあり、 特に初参加者にとって信頼性を高め、相性を確かめやすくするために重要だからです。

プロトタイピング
ローファイ ワイヤーフレーム
提案したソリューションには、社会的な相性やロジスティックな好みに基づいて コンテンツを調整する機能が含まれており、ユーザーフィードバックを通じて 継続的に体験を改善していきます。
- オンボーディング質問票 – ユーザーのペース・目標・好みを収集
- グループ探索 – 相性の良いグループを閲覧・発見できる機能
- レビュー投稿 – 軽量なフィードバックを集め、将来のおすすめ改善に活用

テスト
非モデレート型ユーザビリティテスト
コンテンツ・ナビゲーション・インタラクションを迅速に改善するために、 パイロットテストを含む3回の非モデレート型ユーザビリティテストを実施しました。 参加者は18〜50歳の初心者から中級レベルのランナーで、ターゲットユーザー層と一致しています。 テストでは特定のコンテンツを探す、セクション間を移動するといったタスクを実施しました。 各タスク終了後には簡単なアンケートに回答してもらい、 セッションの最後にはSystem Usability Scale (SUS) を用いて コンテンツの分かりやすさと全体的な使いやすさを評価しました。

反復改善
2つの主要な改善点
相性を示す明確なサイン
ユーザーからのフィードバックでは、グループセクションが少し情報過多に感じられる一方で、 相性に関する情報は役立つと評価されました。 そこで相性バッジを追加し、情報の階層構造を調整することで よりスキャンしやすくし、グループ参加に自信を持てるよう改善しました。

ステップを減らし、精度を向上
グループマッチングに関係のない質問を削除し、フローの摩擦を減らしました。 一部のユーザーは流れが長すぎると感じていたため、 グループの雰囲気を反映するタグに直結する質問のみに絞り込みました。 これにより効率性を高めつつ、マッチングの質を損なわない設計に改善しました。

振り返り
セカンダリリサーチで課題を絞り込めた
文献レビューを通じて主要な課題領域を特定し、MVPを定義し、デザインの意思決定を裏付けました。 これをインタビューのデータと組み合わせることで、重要なポイントに集中し、市場で差別化できるプロダクトを形にできました。
専門家レビューとユーザビリティテスト
授業中に仲間にプロトタイプをレビューしてもらい、初期のユーザビリティ上の問題を発見しました。 本格的なユーザビリティテストの前にこれを行ったことで、素早い改善ができ、明らかな摩擦点を避けることができました。
デザインシステムが改善を加速
共通のデザインシステムにより、修正や更新を迅速に行うことができました。 ただし、コンポーネントの命名や構造については、チームでの認識合わせやUIの一貫性を高めるために改善の余地がありました。
今後:長期的な観察
もしもっと時間があれば、実際のユーザーに長期間アプリを使ってもらい、 相性の良いグループへの参加や有意義なつながりづくりを本当に支援できているかを検証したいと考えています。